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文: 一蓮一VIVANTドラマアニメ日曜劇場考察エンタメ

お金をかけた最強主人公が、結局いちばん世間の評価を取る。VIVANTが示したこと

お金をかけて、主人公が最強。この二つがそろった作品が、型としていちばん世間の評価を取る。私はそう考えています。アニメでもドラマでも同じです。その考えをいちばん分かりやすく見せてくれたのが、TBS日曜劇場の『VIVANT』です。この記事では、視聴率や受賞、配信の数字を確かめながら、なぜこの型が強いのかを整理します。放送中の第2シーズンで目立つ「AIとハッカーが便利すぎる」話にも、愛を込めてツッコみます。※第1作の結末までのネタバレを含みます。第2シーズンは、公式発表と報道で明らかになっている序盤(第11〜13話ごろ)の設定までにとどめ、事件の真相など核心には触れません。

再生ボタンの付いた大きな画面に砂丘の風景が映り、その横にコインと右肩上がりの棒グラフ、ターミナル画面とAIチップが並んだイラスト。制作費をかけたスケールの大きな作品が評価を集めることと、物語を速く進めるハッカーとAIを表している

お金と最強主人公がそろうと、世間の評価がついてくる

『VIVANT』は、TBS系日曜劇場で2023年7月16日から9月17日まで放送された全10話のドラマです。原作のない完全オリジナルで、原作・演出は福澤克雄さん。放送前は、あらすじや役柄をほとんど明かさない宣伝でした。二宮和也さんの出演も放送まで伏せられ、第1話の終盤で明かされています。

視聴率はビデオリサーチ調べ(関東地区)です。以下、特に書かない限り世帯の数字を使います。第1話は11.5%。第4話と第7話でわずかに下がる回はあったものの、全体としては回を追うごとに上がっていきました。最終回は19.6%(個人12.9%)で番組最高、瞬間最高は20.8%です。初回から8.1ポイント伸びました。

テレビの外でも数字は伸びました。公式発表によると、録画視聴を含む第1〜10話のテレビ放送の総視聴人数は6000万人超です。TVerとTBS FREEでの無料配信は、第1〜9話の累計で4000万回を突破。TBSドラマ史上最速でした。ビデオリサーチの2023年7月期の見逃し配信ランキングでも、全ジャンルの1位です。

賞と海外も続きます。海外バイヤーが選ぶMIPCOM BUYERS' AWARD for Japanese Drama 2023でグランプリ。東京ドラマアウォード2024では作品賞の連続ドラマ部門グランプリ。第117回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では、最優秀作品賞を含む6部門を受賞しました。2023年12月17日からは、Netflixで190以上の国と地域に配信されています。

視聴者の数。海外バイヤーや審査員、記者、読者が選ぶ賞。そして海外への広がり。この3つが同じ方向を向いたとき、私はそれを「世間の評価」と呼びます。この記事では、この物差しで型を見ていきます。VIVANTの「お金」と「最強」、ドラマとアニメの先例、配信の時代との相性、便利すぎるAIとハッカー、そして例外の順です。

お金は「入口」。画面から規模が伝わる

制作費について、TBSは金額を公表していません。2023年8月の改編会見で噂を聞かれた際も、答えられない、想像で楽しんでほしいという趣旨で返しています。報道では、地上波ドラマとして異例の制作費だと伝えられています。プロデューサーの飯田和孝さんも東京ドラマアウォード2024の授賞式で、予算がかなりかかったという趣旨を話しました。

規模の大きさは、次の事実から分かります。第1作はモンゴルで2カ月半の長期ロケを行いました。キャストとスタッフは約250名。馬やラクダ、羊など3000頭以上の動物が参加し、北のダルハンから南のゴビ砂漠まで約1000キロを縦断して撮影しています。第2シーズンも撮影期間は約1年に及び、アゼルバイジャンなどで約2か月半の海外ロケを行ったと報じられています。

制作側のインタビューによると、第1話はあえて物語を動かしすぎない構成でした。その代わりに、羊の大群が突進する場面や、警察車両が吹き飛ぶ場面で引きつけています。ここに、型の一つめの役割があります。お金は入口です。大切なのは金額ではなく、お金をかけたと一目で伝わること。説明を聞かなくても、画面の大きさで「これは特別な作品だ」と分かります。

最強は「命綱」。乃木憂助はなぜ強いのか

主人公の乃木憂助(堺雅人)は、表向きは丸菱商事の冴えない商社マンです。しかし裏の顔は、自衛隊の非公認組織「別班」の諜報員でした。これが明かされたのは第4話の終盤です。頼りない会社員が、実は国を守る最前線にいた。このギャップが、主人公の強さをいっそう大きく見せます。乃木にはときどき現れるもう一人の自分「F」もいて、堺雅人さんの演じ分けが大きな話題になりました。

博報堂メディア環境研究所のウェビナーでは、いまのドラマは視聴者をつかむ勝負が1話目だけでなく、3〜4話まで続くと報告されています。VIVANTが乃木の正体を明かしたのは、ちょうど第4話でした。調査はVIVANTの放送より後のものです。それでも私は、続けて見るかを決める頃合いに「この主人公は強い」と示した構成が、長い物語を最終回まで運んだと見ています。

ここから第1作の結末に触れます。第8話で乃木は、テントの会合に潜入したまま、別班の仲間を次々に撃ちます。ところが最終回で、撃たれた仲間たちは命を奪われておらず、日本で無事だったと明かされます。乃木は裏切っていなかったのです。敵の中心で、誰にも読ませない計画を一人で通す。これが乃木の最強さです。テントのリーダー、ノゴーン・ベキ(役所広司)が生き別れた実の父だったことが、その決断をさらに重くしています。そして最後に、乃木は自らの手でベキを討ちます。

最強は命綱です。どれだけ追い込まれても、乃木なら何か手を打っている。そう思わせる信頼が、伏線の多い複雑な物語から視聴者を離しません。周りを固めるのも、阿部寛さん、二階堂ふみさん、松坂桃李さん、役所広司さん、二宮和也さんと、主役級の俳優ばかりです。強い主人公の隣に強い俳優を並べることも、お金のかけ方の一つです。

ドラマでは、同じ型が何度も勝ってきた

いちばん分かりやすい先例は、同じ日曜劇場で堺雅人さんが主演した『半沢直樹』です。主人公は、次々と降りかかる困難に立ち向かう型破りな銀行員。2013年の最終回は42.2%で、今世紀(2001年以降)に放送されたドラマの1位になりました。「倍返し」はその年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれ、東京ドラマアウォード2014でも連続ドラマ部門グランプリを取っています。

2020年の続編は、コロナ禍で撮影が中断し、放送開始が当初の予定から3カ月遅れました。それでも全話が20%を超え、最終回は32.7%(個人21.5%)で番組最高です。ザテレビジョンドラマアカデミー賞では、堺雅人さんが再び主演男優賞を受賞しました。7年を空けて、視聴者の数と賞の両方で二度結果を出したことになります。

『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(2021年)も同じ型です。主人公の喜多見(鈴木亮平)は、WEBザテレビジョンがスーパー救命救急医と紹介する存在。手術室を備えた大型車両ERカーで現場に駆けつけ、死者を一人も出さないことを使命にします。撮影用に作られたERカーは、公道を走れるよう設計された大型トラック並みの車両です。最終回は番組最高の19.5%で、第109回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では最優秀作品賞と主演男優賞を受賞しました。

物語はテレビの外にも広がりました。劇場版1作目は、2023年上半期の実写映画で興収1位。2作目『南海ミッション』も、映連の2025年の集計で邦画6位に入っています。お金をかけた大きな画と、頼れる最強の主人公。この二つがそろうと、ドラマは映画館まで観客を連れていきます。

アニメでも、同じ型が世界で勝っている

アニメの代表例は『俺だけレベルアップな件』です。公式サイトは、主人公の水篠旬を「最弱」から「最強」へ駆け上がるハンターとして紹介しています。原作は韓国のウェブ小説で、日本のA-1 Picturesがアニメ化しました。アニプレックスはCrunchyrollと組んで世界へ届け、プロデューサーは第2期の集団バトルについて、制作の負担が非常に大きいと語っています。

結果は、物差しの3つすべてに出ました。Crunchyroll Anime Awards 2025では、アニメ・オブ・ザ・イヤーと主人公キャラクター賞を含む最多の部門を受賞。2026年も第2期が最優秀アクション作品賞などを取っています。ソニーの事業説明会資料では、2025年3月末時点でCrunchyrollの歴代視聴数1位とされました。2026年7月には劇場版の制作も発表されています。

『葬送のフリーレン』も挙げておきます。主人公は、魔王を倒した勇者一行の魔法使いです。成り上がりの物語ではありませんが、魔王討伐を果たした実力者という、圧倒的な強さを持つ主人公です。TVアニメシリーズの初回を金曜ロードショーで放送したのは史上初で、初回は2時間スペシャルでした。制作はマッドハウスで、第1期は2クール連続の全28話です。

評価もついてきました。東京アニメアワードフェスティバル2025ではテレビシリーズ部門の作品賞。Crunchyroll Anime Awards 2025では、監督賞など4部門を受賞しています。2026年9月時点で、MyAnimeListの総合ランキング1位です。第2期は2026年1月から放送され、第3期は2027年10月から放送予定です。ドラマでもアニメでも、お金をかけた体制と最強の主人公がそろった作品は、国内と海外の両方で評価を集めています。

配信とSNSの時代に、この型はさらに強くなる

クロス・マーケティングの2024年の調査では、動画を倍速で見た経験がある人は47.0%でした。3年前より12.6ポイント増えています。倍速で見ているコンテンツの上位には、ドラマが入っています。見方が速くなるほど、短い時間で魅力が伝わる作品が強くなります。一目で分かるスケールと主人公の強さは、まさにその条件を満たします。

作品の選ばれ方も変わりました。先ほどの博報堂メディア環境研究所のウェビナーでは、若い世代は再生数など周りの評判を見てドラマを選ぶという話が出ています。SNSでみんなで盛り上がる「観戦」という言葉も挙がりました。評判が評判を呼ぶ時代には、最初に目を引く画が大きな武器になります。

第2シーズンは、この環境で結果を出しました。初回(第11話)は18.8%(個人12.1%)。TVerでは初回が配信8日間で887万回再生を突破し、全番組の単一エピソードとして歴代最高を更新しました。それまでの記録は『silent』第4話の582万回です。Xでは世界トレンド1位にもなっています。

お金は入口として、SNSの短い投稿でも伝わる画を作ります。最強は命綱として、倍速で見ても見失わない物語の軸になります。配信とSNSの時代は、この型にとって追い風です。

AIとハッカーが便利すぎる

ここで一つ、愛を込めてツッコませてください。VIVANTのAIとハッカーは、便利すぎます。とはいえ、天才ハッカーやAIは、日本のドラマが長く愛してきた定番です。『ブラッディ・マンデイ』(2008年)は天才高校生ハッカーが主人公でした。『BORDER』(2014年)にはハッカーコンビが登場します。『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』(2018年)では、AIがビッグデータから重大犯罪を起こしそうな人物を割り出す「ミハンシステム」が物語の中心でした。VIVANTは、この系譜に人とAIの両方を置いた作品です。

人のほうは、第1作から登場する太田梨歩(飯沼愛)です。丸菱商事財務部の社員で、システムを改ざんして誤送金を仕組んだ人物でした。その正体は、伝説のハッカー「ブルーウォーカー」。後半では別班に協力し、テントのサーバーから重要な情報を手に入れます。敵側に利用されていた天才が、味方になって行き詰まりを突破するわけです。第2シーズンでは花岡すみれさんが演じ、衛星カメラのハッキングなどで乃木を助けています。

AIのほうは、第2シーズンから加わった別班のスーパーコンピューター「AIハヤト」です。声は高山みなみさんで、初回の放送中にサプライズで発表されました。報道では「別班の頭脳」と紹介され、監視カメラやSNSの映像を驚異的な速さで解析します。第12話の公式あらすじでも、5人の別班員が拉致された事件で、ハヤトの分析から容疑者が浮かびます。マグミクスの見立てでは、第11〜13話では国内の解析をハヤト、海外のハッキングをブルーウォーカーが主に受け持っています。

頼りすぎという声もある一方で、マグミクスは、実際には人間が考えて動かないと解決しない事件も多いと指摘しています。前作にハヤトがいなかった理由が、本編ではなくパーフェクトサントリービールとのコラボ映像で説明されたのも、思わずツッコみたくなるところです。上位の権限者の命令に逆らえない設定のため、機密が最優先の潜入作戦から外されていた、という説明でした。

作り方にも手間がかかっています。ハヤトの部屋はCG合成ではなく、360度をLEDで囲んだセットで撮られていると報じられています。さらに制作の現場でも、本物の生成AIが使われました。TBSは、Googleの動画生成AI「Veo 3」で作った映像を第2シーズンの本編に使うと発表しています。TBSドラマで初めての試みで、TBSグループの媒体によると第11話の一部の映像に使われました。物語の中のAIとは別の話ですが、面白い重なりです。

そのうえで、AIとハッカーは話を速く進めるための装置です。人間の捜査なら数話かかる調べものを、数分で片付けてくれます。Real Soundの記事も、説明台詞をAIとの対話に置き換えることで、情報をテンポよく見せられる点を挙げています。調べものを相棒が片付けるから、最強の乃木は画面の時間を決断と駆け引きに使えます。便利すぎる相棒は、最強主人公を最強に見せる装置です。そこも含めて、VIVANTの楽しさです。

例外もある。それでも主張が成り立つ理由

もちろん例外もあります。『鬼滅の刃』の竈門炭治郎は、最初から最強の主人公ではありません。それでも『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、国内の歴代興行収入1位になりました。日曜劇場の『海に眠るダイヤモンド』は最終回8.3%(個人5.0%)でしたが、東京ドラマアウォード2025の連続ドラマ部門グランプリを取っています。賞という物差しで勝った作品です。

それでも、最初に決めた物差しで見ると違いがはっきりします。VIVANTは、6000万人超の視聴、MIPCOMと東京ドラマアウォードのグランプリ、190以上の国と地域への配信と、3つがそろいました。『半沢直樹』は今世紀のドラマ1位の視聴率に、流行語大賞と東京ドラマアウォードのグランプリが重なりました。『俺だけレベルアップな件』は、Crunchyrollの歴代視聴数1位に、アニメ・オブ・ザ・イヤーと世界への展開が重なっています。一つの物差しで勝つ作品はほかにもあります。複数の物差しが同時にそろうのが、この型の強さです。

最強主人公の側を支えるのは、分かりやすさです。河村鳴紘さんは、『鬼滅の刃』のヒット要因の一つに、誰にでも分かりやすい物語を挙げています。『鬼滅の刃』は、はっきりした目的で分かりやすさを作っていたわけです。田幸和歌子さんはVIVANTの分かりやすさを強みとして論じ、大貫佑介さんは北米では分かりやすい爽快感が好まれると書いています。最強の主人公は、その分かりやすさをいちばん確実に作る方法です。

だから私は、お金をかけて主人公が最強という二つがそろった作品が、型としていちばん世間の評価を取ると考えています。お金は入口として人を集め、最強は命綱として最後まで離さない。VIVANTは、その見本です。

第2シーズンは後半戦へ

第2シーズンは2026年7月26日に始まりました。日曜劇場で「2クール連続」の放送で、話数は前作からの通し番号で第11話からです。物語は前作のラストシーンの直後から続いています。前作の最後に置かれた赤い饅頭、つまり別班を呼び集める合図を乃木が目にする場面から、物語は再び動き出しました。

9月13日の第18話は15.0%(個人9.8%)でした。第2シーズンは、初回から8話続けて15%以上を保っています。9月20日と27日はアジア大会の中継で休止し、10月4日放送予定の第19話から後半戦に入ります。第2シーズンの最終回は11月8日の予定です。

伏線が多く、追いかけるのが大変だという声もあります。それでも、乃木なら何か手を打っているという信頼が、高い数字を支えています。お金をかけた画面が入口になり、最強の主人公が命綱になる。そこに便利すぎるAIと天才ハッカーが加わって、物語は一気に進みます。お金をかけて、主人公が最強。この二つがそろった作品が、型としていちばん世間の評価を取る。後半戦も、その強さを見せてくれるはずです。

よくある質問

Q. VIVANTの制作費はいくらですか?

TBSは制作費の金額を公表していません。2023年8月の改編会見でも、答えられないという趣旨で返しています。報道では、地上波ドラマとして異例の制作費だと伝えられています。モンゴルでの2カ月半のロケや、約250名のキャスト・スタッフ、3000頭以上の動物といった事実から、規模の大きさは伝わります。

Q. AIハヤトは第1作から登場していますか?

いいえ、AIハヤトは2026年の第2シーズンから登場した、別班のスーパーコンピューターです。声は高山みなみさんが担当しています。第1作から登場する天才ハッカーの太田梨歩(ブルーウォーカー)も、第2シーズンで乃木たちを支えています。前作にハヤトがいなかった理由は、サントリーとのコラボ映像で説明されています。

Q. VIVANT第2シーズンの次の放送と最終回はいつですか?

9月20日と27日は、アジア大会の中継のため休止です。第19話は2026年10月4日に放送予定で、ここから後半戦に入ります。第2シーズンの最終回は11月8日の予定です。最終回の日程は、9月13日の第18話の放送で発表されました。

Q. 主人公が最強なら、どんな作品でもヒットしますか?

最強の主人公だけで当たるわけではありません。私は、お金と手間をかけた画面と組み合わさったときに、型としていちばん世間の評価を取ると考えています。『鬼滅の刃』のように、主人公が最強型でない大ヒットもあります。それでもVIVANTや『半沢直樹』、『俺だけレベルアップな件』のように、二つがそろった作品は視聴者の数と賞の両方で結果を出してきました。